大規模修繕は、どのように発注・契約しなければいけないという決まりはありません。発注・契約方式は様々なバリエーションがありますが、今回は代表的な3つの発注・契約方式についてメリット・デメリットを交えて解説していきましょう。
01 責任施工方式
マンションの調査・診断、設計から工事まで、すべての工程を工事業者に一括して任せる方式です。
工事業者は管理組合が選びますが、複数の業者を集めて入札を行う場合や、特定の1社を指名して発注する場合があります。/
メリット |
デメリット |
- ・工事業者にすべて任せられるので、管理組合の負担が少ない
- ・管理組合が工事業者を選べるので、入札・公募などによって競争原理を働かせれば費用を抑えられる可能性がある
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- ・管理組合だけで優良な工事業者を選ぶのが難しい
- ・工事業者の倒産のリスクなど、アフターフォローの面で不安が残る
- ・工事業者の経験や力量によって工事の品質が大きく変わってくる
- ・工事業者自身が工事監理を行うため、手抜き工事・欠陥工事のリスクがある
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メリット |
- ・工事業者にすべて任せられるので、管理組合の負担が少ない
- ・管理組合が工事業者を選べるので、入札・公募などによって競争原理を働かせれば費用を抑えられる可能性がある
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デメリット |
- ・管理組合だけで優良な工事業者を選ぶのが難しい
- ・工事業者の倒産のリスクなど、アフターフォローの面で不安が残る
- ・工事業者の経験や力量によって工事の品質が大きく変わってくる
- ・工事業者自身が工事監理を行うため、手抜き工事・欠陥工事のリスクがある
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02 管理会社施工方式
マンションの調査・診断、設計から工事まで、すべての工程を管理会社に一括して任せる方式です。
責任施工方式に似ていますが、工事業者として、日常の管理業務を委託している管理会社を選ぶのが特徴です。
メリット |
デメリット |
- ・管理会社にすべて任せられるので、管理組合の負担が少ない
- ・工事中の要望や苦情などの窓口を日常の管理と一本化できる
- ・アフターフォローの窓口が日常の管理と同じ窓口になるので、完工後に不具合があったときもスムーズに対応してもらえる
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- ・競争原理が働かないため、費用は相場より高くなりがち
- ・管理会社が工事業者を選ぶため、経験や力量が分からず、品質に不安が残る
- ・管理組合が工事内容や費用の妥当性をチェックしにくい
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メリット |
- ・管理会社にすべて任せられるので、管理組合の負担が少ない
- ・工事中の要望や苦情などの窓口を日常の管理と一本化できる
- ・アフターフォローの窓口が日常の管理と同じ窓口になるので、完工後に不具合があったときもスムーズに対応してもらえる
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デメリット |
- ・競争原理が働かないため、費用は相場より高くなりがち
- ・管理会社が工事業者を選ぶため、経験や力量が分からず、品質に不安が残る
- ・管理組合が工事内容や費用の妥当性をチェックしにくい
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03 設計監理方式
マンションの調査・診断、設計、工事業者の選定、工事監理を外部のコンサルタント(マンション管理士・設計事務所・一級建築士など)に委託して、施工は別の工事業者に依頼する方式です。
管理組合はまずコンサルタントを選定し、そのコンサルタントのアドバイスを受けながら工事業者を選ぶのが一般的です。
メリット |
デメリット |
- ・第三者が中立の立場から診断、設計、工事監理を行うので、工事の品質が担保されやすい
- ・工事業者を選ぶ際にコンサルタントにアドバイスをもらえる
- ・工事業者の選定には競争原理が働くため、費用を安く抑えられる可能性がある
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- ・小規模な工事の場合、費用が割高になることがある
- ・工事費とは別にコンサルタントに払う報酬がかかる
- ・信頼できる優良なコンサルタントを選ぶのが難しい
- ・完工後に不具合が起きたときの責任の所在が不明確
- ・管理組合は、コンサルタントと工事業者の2社と折衝するため負担になる
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メリット |
- ・第三者が中立の立場から診断、設計、工事監理を行うので、工事の品質が担保されやすい
- ・工事業者を選ぶ際にコンサルタントにアドバイスをもらえる
- ・工事業者の選定には競争原理が働くため、費用を安く抑えられる可能性がある
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デメリット |
- ・小規模な工事の場合、費用が割高になることがある
- ・工事費とは別にコンサルタントに払う報酬がかかる
- ・信頼できる優良なコンサルタントを選ぶのが難しい
- ・完工後に不具合が起きたときの責任の所在が不明確
- ・管理組合は、コンサルタントと工事業者の2社と折衝するため負担になる
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まとめ
「手間がかからない方法で、いちばん安い業者を!」とお考えの管理組合様・理事会様もいらっしゃると思いますが、「安かろう悪かろう」だった場合、居住者からやり玉にあげられるのは管理組合・理事会です。
どの方式にもメリット・デメリットがありますので、「これがベスト」という約束はできません。マンション運営の現状や大規模修繕の方向性などを踏まえ、じっくりと話し合ったうえで、最適な方式で発注・契約するようにしましょう。