大和の大規模修繕コラム

マンション管理の潤滑油「コミュニティ活動」がなくなる!?

  • 2016/2/29
  • カテゴリ: 規約・法律

ご存じですか?マンションの標準管理規約が改正されますでは、マンションの「標準管理規約」が改正されることについてお伝えしました。この標準管理規約は、マンションの“憲法”ともいうべき「管理規約」の基礎となる重要なものです。その標準管理規約が改正されることとなり、マンション管理の現場ではさまざまな混乱が生じています。

今回は、その改正の中で検討されている、「コミュニティ活動条項の削除」についてお伝えします。

スムーズなマンション管理はコミュニケーションから

希薄になるマンションのご近所付き合い

マンションは家族構成も生活パターンも異なる他人同士が、壁一枚隔てて暮らす共同住宅です。マンションに限ったことではありませんが、現代のご近所付き合い事情では「隣の部屋・家にどんな人が住んでいるかわからない」ということも決して珍しくありません。「孤独死」が社会問題化していますが、この希薄なご近所付き合いと孤独死は密接に関連しています。

マンション管理にこそ「コミュニケーション」が求められる

マンション管理にこそ「コミュニケーション」が求められるそんな共同住宅であるマンションの維持・管理を円滑に進めていくには、入居者同士のコミュニケーションが欠かせません。ご近所同士の挨拶や掃除などのコミュニティ活動への参加、防犯パトロールを行い交流を深め合うなど、ご近所同士が顔を合わせて顔なじみになることで、「誰が住んでいるかわからない」状態を解消することができます。

またコミュニケーションをはかることで入居者同士の連帯感が生まれ、「マンション管理に参加している」という意識も育まれます。

「コミュニティ活動条項の削除」がマンション管理に与える影響

マンション管理の現場に衝撃が走る

そんな中、国土交通省から発表された今回の標準管理規約の改正。その改正案の中では、「コミュニティ活動条項の削除」が検討されているというから驚きです。上述の通り、コミュニティ活動はマンション管理を円滑に進めていくうえで必要不可欠なものです。それなのに、なぜ削除が検討されているのでしょうか? マンション管理費の現場からは「理解に苦しむ」という声が、次々とあがっています。

マンション管理のコミュニティ活動って?

そもそもマンション管理におけるコミュニティ活動とは、入居者同士が活発にコミュニケーションをはかることで、管理・運営をスムーズに進めることを目的としています。そのために入居者から集めた管理費を、コミュニティ活動に使うことを標準管理規約で認めていました。この条項が削除されてしまうと、今後は管理費をコミュニティ活動に使うことができなくなる可能があるのです。

管理費を悪用するケースがあとを絶たない

どこからどこまでが「コミュニティ活動」?

では入居者から集めた管理費が、コミュニティ活動として使用が認められるのはどんなケースなのでしょうか? 現在の標準管理規約では、「管理費を『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用』にも充てることが可能である」と規定されているだけです。具体性に欠けた表現なので、さまざまな解釈ができてしまいます。実はこの曖昧さに問題点が潜んでいるのです。

こんなケースに使用された例も……

こんなケースに使用された例も……「コミュニティの形成を理由に、入居者の一部しか出席しない飲み会代を管理費から出す」「任意参加である自治会費を管理費から出す」など、コミュニティ活動を盾に管理費が悪用されるケースがあとを絶ちません。

一見、強引にも思える「コミュニティ活動条項の削除」。でも国交省がやや強引にでも規制しようとする背景には、このような実情があるのです。今後増加していくであろう入居者による損害賠償請求に、あらかじめ歯止めをかけておこうとする狙いがあるようです。

まとめ

健全なコミュニケーションが住みやすいマンションをつくる

たしかに一部では、コミュニティ活動条項を盾に不適切に管理費を使っている管理組合が存在するのも事実です。しかし全体から見ればそれはごく一部。ほとんどは適切な会計のもと、マンション管理を行っています。

入居者同士が健全なコミュニケーションをはかっていけば、みんなが住みやすいマンションをつくりあげることができます。今回の標準管理規約の改正が、マンションのコミュニティ形成の足かせにならないことを願うばかりです。

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