大規模修繕完全マニュアル(3)大規模修繕をするべきタイミングと進め方
- 2014/7/17
- カテゴリ: 基礎知識
大規模修繕を行うべき時期は、特に法令で規定されているわけではありません。一般的に「10年に1回は行うべき」と言われますが、これはあくまでも目安に過ぎません。マンションによって建材や環境が異なるため、劣化のスピードが変わってくるのは当然のことです。
大規模修繕を行うタイミングは、早すぎても遅すぎてもよくありません。早すぎると、無駄な工事にお金を使ってしまうことになりますし、遅すぎるとマンションの劣化が進み、修繕費が高くついてしまいます。それでは、どのように最適な時期を判断すればいいのでしょうか?
長期修繕計画はあくまで計画
大規模修繕は一般的に、マンションごとに決められている「長期修繕計画」に従って行われます。長期修繕計画には、建材・設備の平均的な寿命とともに、次に大規模修繕を行うべき予定時期も記載されています。また、大規模修繕にかかる概算費用や修繕積立金などについても記載されています。
ただし、この長期修繕計画を真に受けるのは、ちょっと考えものです。計画を立てた時点で約10年後の劣化状況を正確に予測することなど、できるはずはないからです。計画どおりに劣化していれば問題はありませんが、計画はあくまで計画であり、多くの場合、ズレが生じます。例えば、すでに明らかな劣化や不具合が見られるのに、長期修繕計画上はまだ修繕すべきタイミングではないからと、規定の時期になるまで待っていたら、マンションの安全性や資産価値を低下させてしまうことになります。
大規模修繕の適切なタイミングを見極めるためには、定期的に長期修繕計画そのものを見直す必要があります。5年に1回くらい業者に建物診断をしてもらい、劣化状況・劣化予測から長期修繕計画を更新していけば、実際に工事を行うタイミングを見誤ることはないでしょう。
大規模修繕の進め方・流れ
いざ、「大規模修繕をしよう!」ということになった場合、どんな流れで進めていけばいいのでしょうか。以下では、管理組合が中心になって大規模修繕を行う「責任施工方式」における工事の進め方・流れについてご説明します。
体制を整備
理事会・総会で大規模修繕の実施を決定したら、修繕委員会を立ち上げます。
マンションの調査・診断
一般的に、調査・診断をすることなく、大規模修繕を行うことはありません。まずは、詳細な調査・診断を行ってマンションの劣化状況を把握します。
修繕基本計画・長期修繕計画
調査・診断の結果から、修繕の時期や方法を決定する修繕基本計画を作成し、長期修繕計画を最新の内容に更新します。
修繕工事の設計
大規模修繕工事の細かな仕様を決定する修繕仕様書を作成し、概算の工事費用を算出します。修繕積立金の残高と照合したうえで、必要に応じて一時金の徴収や借り入れも検討します。
見積もり・業者決定
大規模修繕の方針や予算が確定したら、見積もりをとって工事業者を選定します。
総会決議
理事会で総会を開催します。ここで、工事業者や修繕内容、発注金額やスケジュールなどを居住者に報告して承認をもらいます。
工事契約締結
工事業者と工事契約を締結します。
工事開始
住民説明会を行ったうえで、大規模修繕工事を開始します。工事中は、理事会・修繕委員会が工事監理を行い、項目どおり・スケジュールどおりに工事が進んでいるかを確認します。同時に、居住者への告知もこまめに行います。
工事完成引渡し
工事が完了したら問題がないかチェックをして、工事完了引渡書を取り交わします。
責任施工方式における大規模修繕の流れは上記のとおりです。マンションによって進め方が異なる場合もありますし、次回のコラムで詳しく解説する「大規模修繕の発注方式」によっても進め方は変わってきますが、まずは全体的なイメージとして把握しておきましょう。
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