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「安全・作業性・美しさ」— 現場を支える足場の哲学。恒進建設・大塚代表に聞く
マンションの大規模修繕工事において、建物をぐるりと囲む“足場”は、工事全体の“安全”と“仕上がりの質”を静かに支える存在です。
その一段一段には、職人の判断と経験、そして見えない思いやりが詰まっています。
株式会社大和は、長年にわたり数多くの大規模修繕工事で協働してきた、足場工事の専門会社・株式会社 恒進建設様にご協力いただき、足場づくりの現場に息づくこだわりを動画で記録しました。
今回は、恒進建設の代表取締役であり、ご自身も現場に立つ足場職人である大塚 恒好(おおつか つねよし)さんに、足場づくりへの哲学と、現場への誠実な思いを伺いました。
(聞き手:株式会社大和 広報室)
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本日はよろしくお願いします。
恒進建設様は、大規模修繕工事の足場を専門に手がけられています。
大塚様が考える「良い足場」とは、どのようなものでしょうか?
大塚さん
私たち恒進建設が足場を組むときに大事にしているのは、“安全・作業性・美しさ”この3つです。
居住者の皆様の安全を守ること。そして、足場を使って作業する他の職人さん(塗装や補修など)が作業しやすいこと。さらに、構造的にも無駄がないこと。
この3つのバランスを、現場ごとに確かめながら、ていねいに整えた足場を納める。それが私たちの仕事です。
わずか数センチが「安全」と「作業」を変えます。その3つのバランスの中で、特にこだわっている点、気を配っている点はありますか?
大塚さん
特に気を配っているのが、足場と建物との“距離感”ですね。
最低10cm、理想は20〜25cmの間に収めたいです。その「10cm」や「20〜25cm」という数値には、どのような意味があるのでしょうか?

大塚さん
例えば、最低10cmという基準は、塗装工事で使うローラーが通るギリギリの間隔で、作業しやすさの目安となる距離です。
この間隔を基準とすることで、外壁の補修や塗装を行なう際の最適な距離感となります。建物との距離が近くても遠くてもダメなんです。狭すぎれば作業がしづらく、広すぎれば(隙間からの)落下のリスクが高まります。まさに職人の経験が生きる部分ですね。
大塚さん
はい。建物の形状や、足場で作業をする他の職人の動線、そういったことを重視して、“ちょうどいい”位置を見極めます。
数値で言えばわずか数センチの違いです。けれども、良い足場を提供できないと、現場代理人さん(大和さん)や、足場で作業をする他の職人さんに申し訳ないですからね。そこに、私たちのこだわりが宿っています。安全面について、特に注力されていることはありますか?

大塚さん
私たち恒進建設では、安全性の高い“先行手すり”の足場を標準にしています。
これは、足場を組み立てる際に、上の段にあらかじめ手すりを設置できる仕組みのことです。それによって、どのような効果があるのでしょうか。
大塚さん
足場の組立や解体中に、作業員が落ちてしまう“墜落災害”のリスクを大きく減らすことができます。
足場の上での作業は、常に危険と隣り合わせです。だからこそ、安全な足場を“当たり前”にして、従業員を守る。それが、足場専門会社として必要なことだと考えています。
私自身も現場で足場の組立に携わっていますが、自分だけでなく、共に働く職人たちの安全を守るためにも、この“先行手すりの足場”を標準仕様としています。大規模修繕工事の現場は、居住者の皆様が生活されている中で行われます。
図面通りにいかない難しさもあるかと思いますが。大塚さん
おっしゃる通り、現場って、図面や計画通りにいかないこともあります。
たとえば荷揚げ・荷下ろしの場所ひとつでも、人や車の動線を見ながら、安全で効率的な場所を探します。
作業効率が良い場所を見つけても、そこがマンションの駐車スペースだったり、人通りの多い場所だったりすることがあります。そのような時は、どう対応されるのですか?
大塚さん
そんな時は、大和さん(株式会社大和)や管理会社さんと相談し、できるだけ(居住者の皆様の)負担の少ない“落としどころ”を探して提案しています。
足場の組み立ての安全と、居住者の皆さまの生活。その両方に目を配ることを、職人として大切にしています。その姿勢が、現場全体の信頼につながっていくのですね。
大塚さん
工事は居住者の皆さんのご協力があってこそ行なえます。
だから私たちも、誠実に、責任を持って応えたいと思っています。最後に、大塚様がこの仕事で最も達成感を感じる瞬間を教えてください。
大塚さん
足場の解体は、工事の終盤に行います。じつは私たちが一番気を使う作業です。工事の「終わり」だからこそ、気を使うのですね。

大塚さん
そうです。工事が行われた(きれいになった)建物を傷つけないよう、慎重に足場を解体していきます。外壁の塗装や補修がきちんと仕上がっているかを確認しながら、一段ずつ丁寧に足場を地面に降ろしていきます。
そして、きれいになった建物を一番近くで見届けて── 何も起きず、無事に終わる。
それがいちばんの達成感を感じる瞬間ですね。「何も起きない」という当たり前を守り抜くこと。その誠実さが伝わってきました。
本日は貴重なお話をありがとうございました。- ▮撮影後記:「職人が言葉で伝える、ということ」
- 恒進建設の大塚さんは、足場職人です。
自分の仕事を言葉で語れる、稀有な職人でもあります。今回のコラボ企画は、株式会社大和からの打診で始まりました。
最初の打ち合わせは約二時間。一つ質問を投げかけるたびに、安全への考え方、作業性の工夫、そして美しい足場づくりの哲学が静かに広がっていきました。
そこには技術論だけでなく、足場職人としてどうありたいかという信念がありました。安全・作業性・美しさという言葉は、恒進建設にとって単なる指針ではありません。
居住者の安全を守り、他の職人が安心して作業できる環境を整える。
その姿勢こそ、足場職人としての理念を体現しています。動画では紹介しきれなかったが、取材の中で心に残った大塚さんの言葉があります。
「足場の最下部、つまり一段目が本当に大事。そこがしっかりしていないと、全体の仕上がりに響くし、取り返しがつかない。」
構造への誠実さ、判断への責任。
その一言に、職人としての哲学が宿っていました。さらに、こんな想いも語ってくれました。
「足場職人って、居住者さんに怖いと思われたくないんです。マンションで生活されている方々の毎日を邪魔したくない。だからこそ、静かに、丁寧に終わらせたい。」足場の組み立てや解体は、注目を集めやすい工事の最初と最後に行われます。
だからこそ目立たないように終わらせるという姿勢に、職人としての在り方を感じました。取材を経て迎えた撮影当日。
大塚さんは初めての撮影とは思えないほど自然に言葉を紡いでくれました。
収録の終盤、「最初に撮り始めた部分、話し方が固かったので、もう一度撮り直してもらえませんか?」
と自ら申し出られました。より伝わる形にしたいというその一言に、大塚さんの誠実さと、この企画への真剣な思いがにじんでいました。
足場は、ただの作業用の構造物ではありません。
大規模修繕工事の現場の、始まりと終わりを見届ける象徴です。
そこには、工事全体を支える信頼と責任が宿っています。そして、何も起きないという結果を「当たり前」にすること。
それは長期間、多くの工程が重なる大規模修繕において、最も難しく、最も尊い仕事の形です。恒進建設と大和が共有しているのは、その当たり前を支える思いと行動、そして技術の積み重ねです。
工事が終われば足場は静かに姿を消します。けれど、その場所には「安全を守った仕組み」と「人への配慮」が確かに残る。
これが、恒進建設と大和が共に築いてきた信頼のかたちです。この動画は、そうした誠実な仕事を映像と言葉で記録し、次の現場へと受け継ぐために生まれました。
安全で美しい足場と、何も起きない現場を支える人々の姿を、感じていただけたら幸いです。――取材・撮影:株式会社大和 広報室